2/12(木)「ある女の子の1日…」
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『チクルちゃんについて』
その女の子は、少しもTVを見ようとはしない。
実際に1分でもTVは見ないし興味を示さない。
また、その女の子は 少しも人に話し掛けようとはしない。
自分以外に興味が無いようだ。
あるとき、ボクがこの病棟内のデイルームにある『本貸出し帳』をなんとなく見ていたら、
9月に、その女の子の名前がたくさん書いてあるのに気が付いた。
1日に5冊くらい借りてる日もある…
おそらくこの頃に入院したのかと思われるが、そうすると半年近く入院していることになる。
「あ、そういえば ボクがなんとなく鬱っぽくなったのも同時期だなぁ…」
妙な親近感を抱く(意味なし)
とりあえず、今日(98年 2/12)この女の子の1日の様子を書いてみたが、
昨日も一昨日も、又、明日や明後日も、まったく同じ様な行動を取ると思われる。
この女の子が半年近くかけて確立した、この病院においての『生きる』パターンなのだ。
このページを見てもらって、皆さんが何を感じるかは わからないが、
ちょっと考えてもらいたい事がある。
1週間程、TVや新聞を何も見ず 人とまったく話をしないとどうなるか…
おそらくほとんどの人の精神状態は不安定になってしまうだろう。
悲しい事かもしれないが、今の日本において、
たとえそれがくだらない番組だとしてもTVを見ないということは、
日々刻々と変化する社会との係わりを放棄している事にもなる(大袈裟かな?)
ボクも最近は全然TVを見てないし、人とも(家族と医師以外とは)ほとんど会話をしていない日々が続いている。
が、その代りに、チャットやメールでなんとか精神状態を保っているというのが今の現状だ。
まぁボクのことはどうでもいいとして…
この女の子に、妙に生命感が無いのは確かだ。
廊下で気だるそうに うずくまってるときなんかは、『生』を感じるとること自体が難しい。
いつかは この女の子も社会と係わりを持つことになるのだろうが、
早くその日が訪れる事を願っている(余計な お世話かなぁ?)
AM6:30(大部屋)
検温。
AM7:25〜AM7:35
外で散歩。
AM7:40〜AM8:00(デイルーム)
朝食。
AM8:00〜AM8:40(デイルーム)
CDを聞いてる。
AM8:40〜AM9:15(お風呂)
入浴。
AM9:30〜AM10:30
外出。
周りの人や物には まったく関心が無いようだが、
途中、ガラスのようなところに自分の姿が映ってるのを見て、しばし止まる。
病院の玄関を出ると すぐに横断歩道があるが、そこを鳥のように羽ばたいて行ってしまった…
(てゆうか、急に走り出した… 彼女は外では走る事が多い。元気なのかなんなのか… 謎なり)
追うの不可能なり(泣)
AM10:30
いつのまにか病棟内に戻っていた。謎。
AM10:30〜AM10:50(デイルーム)
お絵描き。
AM11:00〜AM11:15(デイルーム)
読書。
ドストエフスキー作『罪と罰』
AM11:20〜AM11:30(廊下のすみ)
例の場所で黄昏てる。
AM11:40〜AM12:00(デイルーム)
本読んでる。
ドストエフスキー作『罪と罰』
AM12:00〜AM12:20(デイルーム)
昼食。
AM12:30〜PM1:00(廊下のすみ)
例の場所で漫画雑誌を読んでる。
PM1:00(大部屋)
検温なので自分のベッドへ。
PM1:15〜PM1:50(デイルーム)
CD聞いてる。
PM2:00〜PM3:00(デイルーム)
レクリェーション。
今日は卓球。
彼女が唯一生き生きとしているとき。
彼女は卓球がうまいが今日だけは先生に負けて、悔しそうにしていた(笑)
PM3:00〜PM3:30(デイルーム)
絵描いてる。
PM4:20〜PM5:00(外出)
外を散歩。
―――――「散歩」―――――
(PM4:40〜PM4:50)(外出)
芝生のベンチに、ぽつんと一人で座ってる。
(PM4:50)(外出)
急に駆け出して行った。
PM5:10〜PM5:40(デイルーム)
読書。
ドストエフスキー作『罪と罰』
PM5:45〜(デイルーム)
CD聞いてる。
PM6:10〜PM6:20(デイルーム)
夕食。
PM6:30〜PM6:45(外出)
散歩。
PM6:50〜PM7:30(デイルーム)
絵描いてる。
PM7:35〜PM7:55(デイルーム)
読書。
ドストエフスキー作『罪と罰』
PM7:58〜PM8:15(デイルーム)
CD聞いてる。
PM8:15(デイルーム)
眠剤、その他クスリの服用。
チクルちゃんも、このときだけはクスリを服用している。
(他は服用していない)
〜PM8:30(デイルーム)
CD聞いてる。
PM9:15〜PM9:50(廊下)
読書。
ドストエフスキー作『罪と罰』
なぜかデイルームには来ない。
いつもこの時間は廊下でぽつんと座って読書をしている。
PM9:50
大部屋に戻ってった。
就寝。
『後記』
恐ろしいほどストイックな生活とも言える。
あまり細かく1日の行動を書いていないので わからないかも知れないが、
この女の子は例の場所で 気だるそうに うずくまっていることが本当に多いのだ。
また、デイルームで、この女の子の 隣りのテーブルでは他の女の子たちが集まってトランプ等をしている事が多々あるのだが、もちろん参加は しない。
おそらく何回か話し掛けられたこともあるのだろうが、拒否したのだろう。
近寄りがたい何かオーラのようなものが漂っているときが たまにある。
何をするにも端っこ。
もう指定席といった感じで、デイルームでは この女の子は端っこの角の席に いつも座る。
食事中に、他の人たちは会話等があるのだが、彼女は もちろん会話をしない。
とにかく周りから見てると酷く寂しそうに見える。
といっても、彼女は会話が出来ないわけではなく、
誰かに話し掛けられると、ごく普通に会話をしだす。
そのときは、今まで無表情だった顔が急に笑顔になるのだ。
この女の子自身は、何も孤独を感じていないのかもしれない…
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